『地価迷走 デフレからインフレへ』
海老原 彰 著四六判・272頁
定価:1,980円(税込)
ISBN 978-4-905366-24-9 C2034
2013年9月発行
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アベノミクスで、はたして地価は上がるのか?!
経済のファンダメンタルズが激変する中で地価は迷走する!公示価格をはじめとしたさまざまな地価情報の本質を知り、それらをどう活かすべきか?
筆者は、地価は長期的には下落トレンドに入っており、しばらくは小刻みな上昇・下落を繰り返すとみている。
地価の迷走が予想されるなかで、その動向を示す指標の本質をつかんでおくこと、そして、地道ではあっても確かな視点をもつことの大切さを訴えている。
第1部 「一物四価」の謎と公示価格の真実
第1章 そもそも地価公示に求められたものは、何であったか?――「ある価格」と「あるべき価格」――
①地価公示制度が生まれた経緯 (1)地価公示は、わが国の不動産鑑定評価制度における「三種の神器」の一つ (2)公示価格は、鑑定価格をつなぎとめるアンカー役 ②「ある価格」or「あるべき価格」論の背景 (1)「ある価格」論の論理上の矛盾 (2)「ある価格」vs「あるべき価格」論に横たわる時代背景 (3)地価公示制度が成立する前後の土地をめぐる経済情勢 ③バブルに対峙するものとしての「あるべき価格」論 ④地価が安定してきたことで、「ある価格」論が優位に立った
第2章 現実の取引からみた公示価格の位置
①真に役立つ価格データとしての地価公示のあり方 ②地価公示は、「ある価格」でもなかった (1)地価公示の決定プロセスの問題点 (2)取引価格との乖離からみると、公示価格は「ある価格」とはいえない ③公示価格が現実の取引と乖離することとなった理由 (1)不動産鑑定評価は、地価対策の一環として創設された (2)不動産鑑定士に義務づけられた社会科学と無縁のガイドライン (3)収益還元法の基本的な考え方と純収益の予測 (4)一九九〇年の不動産鑑定評価基準の改訂と「収益還元法の重視」 ④地価抑制の機能を果たせなかった地価公示
第3章 それでも、地価公示は一定の役割を果たしてきた
①行政事業レビューでのやりとりが語るもの ②路線価の何倍かという目安観をもって路線価を使えば、相場の見当をつけることができる ③市場の不完全性とインターネット (1)土地取引と市場の不完全性 (2)不動産オークションは、市場の不完全性を変えることができるか?
第4章 概念を変えれば、公示価格は一般の人にすっきりと分かりやすいものとなる
①国土交通省の「不動産価格指数」の運用が示すこと ②改めて「正常価格」について考える ③「最も確からしい売買価格」という考え方 ④「あるがままの価格」と「あるべき価格」の二本立て
第5章 土地評価ニーズの多様性と土地評価の多元化
①公共事業における買収価格と公示価格 (1)憲法二九条三項の定める「正当な補償」と公示価格 (2)経済的側面から見た現在の損失補償 ②固定資産税課税のための評価と公示価格 (1)固定資産税のあらまし (2)固定資産税の機能と性格 (3)固定資産税課税のための評価はどうあるべきか? (4)大規模な事業にともなって地価が大きく変動する場合 (5)わが国の固定資産税の実効税率は世界的に見て低い (6)応益税の観点から見た理想的な課税標準の算定 ③土地に対する固定資産税の効果 ④一般の土地取引の指標として真に有用なものとするために
第6章 地価公示のこれからのあり方
①地価公示への「一元化」をやめる (1)固定資産税評価を「時価評価」とする方法をやめる (2)公共事業に伴う買収価格は、生活再建を第一義にすえた価格とする (3)「一元化」を改め、一般取引の指標となるものに変える ②「公共財」であることと「フリーライダー問題」
第2部 地価はこれからこう動く
第1章 大震災の前後と現在で、地価はどう動いているか?
①東日本大震災までの東京の地価動向 (1)地価動向を知るためのデータ (2)東日本大震災前の不動産を取り巻く経済情勢 ②東日本大震災を経験した不動産市場のあり方 (1)「イメージ選好」から「安全性重視」へ (2)原発事故と電力不足の影響 (3)「所有」から「賃貸」へという動き ③地価動向をつかむには「東証住宅価格指数」などが役に立つ
第2章 地価の「トレンド」を読む
①長期の「トレンド」を決める大きな要因 (1)需要サイドに影響を与える要因 (2)供給サイドに影響を与える要因 ②インフレで地価が上がるのは、大都市中心部など一部だけ (1)地価下落がデフレの原因という見方 (2)デフレからインフレへ (3)経済の土台の揺るぎとインフレ化の波 (4)インフレでも個人所得が上がらなければ、地価は上昇しない (5)J-REITや海外からの投資をどう見るか? ③長期の「トレンド」と短期の「サイクル」で地価は動く (1)地価を決める長期の「トレンド」とは? (2)短期の「サイクル」とは何か? (3)住宅市場――アメリカとわが国の根本的な違い ④セミ・マクロ的に見た不動産市場の考察 (1)人とモノの大きな動きから見たセミ・マクロ的な地価動向 (2)地域ごとの具体的な動き
第3章 今後、目をはなせない市場の動勢
①「ストロー化現象」と郊外の「ゴーストタウン化」 ②都市のコンパクト化に向けた動き ③金融円滑化法が終わることによる不良債権の増大の懸念 ④消費税が不動産価格に及ぼす影響
あとがき
参考文献