『土壌汚染リスクと土地取引-リスクコミュニケーションの考え方と実務対応』
独立行政法人産業技術総合研究所 主任研究官 丸茂 克美/明海大学不動産学部専任講師 本間 勝/株式会社ブラウン・フィールド・アドバイザーズ 取締役COO 澤地 塔一郎 共著A5判・272頁
定価:3,520円(税込)
978-4-901431-96-5 C2034
2011年1月発行
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新しく法対象とされた自然由来の有害重金属類の基礎知識
改正土壌汚染対策法の概要と実務ポイント
土壌汚染のトラブル事例に学ぶ不動産開発事業における
土壌汚染対策とリスクコミュニケーションの具体的方法本書は、平成22年の改正土壌汚染対策法の施行によって土壌汚染問題に携わる事業者、土壌汚染問題に遭遇した当事者が土壌汚染問題をどのように解決させるか、という視点から、その中でも今後一番重要な視点である【自然由来重金属】の取り扱いと、【リスクコミュニケーション】の方法という2つの大きなテーマに的を絞った実務書である。
第1章の【土壌汚染問題の基礎知識】は自然由来重金属類の科学的な側面を解説したもので、「土壌とは何からできているか」からはじまり、「土壌環境基準をどう理解するか」、「日本の都市域の地質の特性と自然起源重金属類問題」など、事業者、当事者として必要な情報が、「小難しさ」の抵抗なく理解できるよう工夫されている。
第2章の【土壌汚染の関連法】は、「土壌汚染対策法」の運用後の実態として、土壌汚染問題のほとんどが汚染に起因する健康問題というよりも、むしろ土地取引に起因する不動産の問題であることが明らかになっていることから、「不動産法の視点からの土壌汚染問題」も取り上げ、法制度の対応状況について、実務上今後も注視しておくべきポイントを踏まえて解説している。また、土壌汚染問題に関する訴訟事例も取り上げている。
第3章の【リスクコミュニケーションの方法】では、土壌汚染の問題は、土壌汚染が起きたこと自体よりも、その後の姿勢や対応、情報公開の善し悪しが、企業や商品のイメージに大きな影響を及ぼすものであることから、事例も取り入れながら、リスクコミュニケーション・リスクマネジメントの考え方と、情報公開の行い方、そのタイミングや内容の検討の仕方など、状況に応じた具体的な実務対応手順について事細かに解説している。
各章はそれぞれ独立していて、どの章からでも読み始めることができる。また、どの章も「実務に直結」させることを念頭に書かれている。3人の執筆者は、長年にわたり自然由来重金属類の分析研究を行っている実績のある研究者、不動産の環境政策を専門として不動産実務や研究において長年土壌汚染問題を取り扱っている研究者、不動産の開発実務の中で、業務における土壌汚染地の対応とリスクコミュニケーションを実践してきた経験を有し、近年は土壌汚染地の再生ビジネスを実践している先端の実務家となっている。
現場で悩んでいる当事者、リスク管理者、行政担当者の方々に。
第一章 土壌汚染問題の基礎的知識
第1節 土壌とは何か
1改正土壌汚染対策法の対象となった自然由来の重金属類
2土壌という物質を理解することの重要性
3土壌は何からできているか
4粘土鉱物と腐植物質
5土壌の化学組成
6地質学的に見た各地の土壌第2節 土壌環境基準をどう理解するべきか
1溶出量試験と含有量試験の概要
2鉛の溶出量基準
3鉛の含有量基準
4海水中のほう素やふっ素濃度の意味するもの第3節 我が国の都市域の地質の特性と自然起源重金属類問題
1自然起源の重金属類のバックグラウンド値を把握するための地球化学図
2自然起源の有害重金属類の実態を明らかにするための土壌・地質汚染評価基本図
3土壌・地質汚染評価基本図で明らかにされた平野地域の海成層問題
4平野部や台地・丘陵部になぜ海成層が分布するのか
5海成層からの砒素やカドミウムの溶出メカニズム第4節 自然起源の有害重金属類の特性と対応
1山間部の火山活動と自然起源重金属類
2自然起源の汚染を伴う土砂の対応
3地下水組成から見た平野や丘陵の自然起源の砒素やカドミウム、鉛の健康リスク
4砒素やカドミウム、鉛の全量から見た平野や丘陵の自然起源重金属類の健康リスク
5火山地帯や鉱床地帯の自然起源重金属類の健康リスク第5節 自然起源の有害重金属類の識別法
1現場分析技術の活用
2存在形態分析
3鉛同位体による自然起源の鉛と人為汚染鉛の識別第二章 土壌汚染の関連法
第1節 土壌汚染に関わる法制度の対応
1法制度の対応
2環境法と土壌汚染
(1)環境問題としての土壌環境法政策の歴史
(2)地方公共団体における土壌汚染対策に関連する条例・要綱・指導指針等の制定状況
(3)特定施設
(4)特定有害物質
(5)土壌汚染対策法の公布・施行
(6)土壌汚染対策法施行後の実態と改正法第2節 改正土壌汚染対策法
1改正法の概要
(1)土壌汚染状況調査
(2)区域の指定
(3)指示措置の内容
(4)要措置区域等への指定の申請
(5)搬出土壌の適正処理
(6)汚染土壌処理業
(7)指定調査機関
2改正法施行後の動向と検討点第3節 土壌汚染対策法と土地取引の関係
1土壌汚染対策法と土地取引の考え方
2不動産法と土壌汚染
(1)法制度における土地取引への対応状況
(2)土壌汚染と土地取引
3土壌汚染に関する裁判の状況
4土地取引における諸問題に対応する方法
(1)契約時における注意点
(2)相談窓口【資料(1)】
①都道府県・土壌汚染対策法政令市が定めている条例・要綱・指導指針等
②土壌汚染対策法政令市以外の市区町村が定めている条例・要綱・指導指針等
③都道府県・土壌汚染対策法政令市が制定している土砂のたい積、埋立て等による土壌汚染の防止を図る条例等
④土壌汚染対策法政令市以外の市区町村が制定している土砂のたい積、埋立て等による土壌汚染の防止を図る条例等
⑤土壌汚染対策基金による助成を受けることができる助成制度
⑥土壌汚染対策基金以外で、土壌汚染の調査や回復対策に利用できる基金
⑦都道府県・土壌汚染対策法政令市が定めている補助・融資制度【資料(2)】水質汚濁防止法特定施設一覧表
第三章 土壌汚染とリスクコミュニケーション
第1節 土壌汚染リスクの問題とリスクコミュニケーション
1土壌汚染対策法の改正とリスクコミュニケーションの必要性
(1)化学物質との共存共生の観点から
(2)公害問題と土壌汚染問題の観点から
(3)土壌汚染対策の情報公開の観点から
2土壌汚染の特徴について
(1)特定有害物質
(2)土壌汚染の摂取経路と指定基準
3リスク認識の「ずれ」の問題――リスクギャップの問題
4企業・工場等の汚染原因者のリスク認識
(1)企業リスクの問題
(2)不動産取引から見た売主側の土壌汚染リスク
5周辺住民のリスク認識
6不動産業界のリスク認識
7不動産業界における土壌汚染のトラブル事例
(1)マンション建設工事中に土壌汚染が発覚し、建物を解体した事例
(2)マンション建設中の異臭騒ぎから土壌汚染が発覚し、完売済みであったが、事業主側の判断で全て契約解除の上、損害賠償までした事例
(3)学校跡地で甚大な汚染問題が判明し、大規模マンション計画が中止された事例
(4)大型ビルの建設中に、周辺住民からリスクコミュニケーションを要望された事例
8土壌汚染のリスクマネジメントについて
(1)リスクマネジメントの定義
(2)土壌汚染のリスクコントロール―不動産開発業者の場合第2節 リスクコミュニケーションの具体的方法
1リスクコミュニケーションが必要な場面
2リスクコミュニケーションにおける各当事者の立場や役割
(1)工場等の操業者の立場と役割
(2)周辺住民の立場と役割
(3)土地所有者の立場と役割―土地を処分する売主の立場から
(4)不動産開発事業者の立場と役割
(5)土壌調査会社の役割
(6)土壌汚染対策会社の役割
(7)建設会社の役割
3リスクコミュニケーションにおける自治体の役割について
4リスクコミュニケーションの心構え
5土壌調査を行う前に……
6リスクコミュニケーションの検討事項
(1)いつ情報公開を行うか
(2)リスクコミュニケーションの対象者は誰か
(3)情報公開の内容
(4)情報公開の手段
7住民説明会の準備と開催について
(1)住民説明会の開催準備
(2)各場面での説明について
(3)専門家の活用について
(4)土壌調査・対策会社の選定について
8リスクコミュニケーションの成功事例第3節 不動産開発事業における土壌汚染対策とリスクコミュニケーションの方法―不動産売買における売主、買主、顧客との関係を中心に
1用地取得段階(不動産取引上の情報開示)におけるリスクコミュニケーションの方法
(1)不動産売買契約段階での協議事項
(2)土壌汚染の恐れのある土地の売買取引時の留意点
(3)リスクコミュニケーションの観点から
2事業段階・対策工事段階におけるリスクコミュニケーションの方法
3販売段階での情報公開とリスクコミュニケーション
(1)土壌汚染情報の説明について
(2)販売活動でのリスクコミュニケーションの方法
4管理段階でのリスクコミュニケーション第4節 改正土壌汚染対策法の課題と留意事項
1土壌汚染の把握と適切な指導がどの程度進むか
2改正法第14条は活用されるか
3掘削除去への偏重は改善できるか――掘削除去が選ばれる理由
4ブラウンフィールドの解決策とされるリスクコミュニケーション索 引
土壌汚染リスクと土地取引
リスクコミュニケーションの考え方と実務対応
丸茂克美
本間 勝
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