『用地買収と生活補償−基本的生活権の構成と具体的補償事例』
元明海大学大学院不動産学研究科教授 田辺 愛壹不動産鑑定士/NPOリロケーション・アドバイザリー・サービス代表 海老原 彰 共著
A5判・324頁
定価:4,180円(税込)
ISBN978-4-901431-65-1 C2034
2008年4月発行
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公共の福祉と被収用者への十全たる補償の両立、起業者と被補償者との深い信頼関係を築くために
憲法、土地収用法、補償基準等の沿革・規定を踏まえ、財産権を収用される被収用者の立場に立った生活補償のあるべき姿を論述しています。
被補償者の生活補償を理念に掲げるNPO代表者でもある筆者の実務経験から厳選された補償事例[28例]を紹介。
用地ご担当、不動産鑑定士、不動産・補償コンサルタント、再開発コーディネーター・弁護士の方へご紹介させて頂きたい一冊です。
序 章 財産権は幸福追求に対する権利である
1 金澤良雄教授の参考意見と本書の目的
2 基本的人権としての「基本的生活権」の構成
3 損失補償を司る起業者の役割第1章 用地補償における基本的生活権の構成
1 財産権の保障
1 私有財産制度と財産権の保障
(1) 生来の幸福追求権と財産権
(2) 財産権の性格
(3) 憲法29条の規範構造
2 財産権と損失補償
(1) 公用収用と損失補償
(2) 明治憲法上の財産権の補償
(3) 収用による侵害の態様
(4) 完全補償説と相当補償説の発端
(5) 学説の動向
3 財産権補償から生活補償へ
(1) 補償対象の変遷
(2) 補償の究極の理念(生活補償)
(3) 十全な補償
2 土地収用法の沿革と生活補償
1 土地収用の概念
2 土地収用法の沿革
(1) 概 要
(2) 大蔵省布達159号による『地券渡方規則』改正20条
(3) 太政官達173号(明治7年12月27日)
(4) 明治8(1875)年の『公用土地買上規則』
(5) 明治22(1889)年土地収用法
(6) 明治33(1900)年土地収用法
(7) 昭和26年(1951)年土地収用法の制定
3 土地収用法に生活権補償の理念はあるか
(1) 明治土地収用法における物件移転補償の考え方
(2) 現行土地収用法の規定と生活補償
(3) 建設委員会における審議と立法担当者の答弁
(4) 結 論
3 損失補償基準要綱の沿革と生活補償
1 損失補償基準の沿革(要綱前史)
2 損失補償基準要綱の閣議決定
3 要綱の性格
4 公共用地審議会の答申の骨子
5 要綱の内容
(1) 要綱の基本的考え方
(2) 要綱の対象
(3) 要綱の内容
(4) 要綱の改正
6 生活補償についての要綱の検討
7 用対連基準および同細則について
4 財産権二分論
1 財産権二分説
(1) 財産権概念を二分する必要性
(2) 「小さな財産」と「大きな財産」
(3) 侵害行為の態様からの二分説
(4) 完全補償では足りないとする説
(5) 生存財産と独占財産
(6) 「人権としての財産権」と「人権でない財産権」
(7) 生活財産権
(8) 四分説
(9) 非人権的財産権と人権的財産権に分けることに関心
を持つ見解
2 財産権二分論の展開
(1) 閣議了解の見解
(2) 閣議了解を超える補償
(3) 基本的生活権の構成への架け橋
5 基本的生活権の構成
1 生活者としての被収用者の生活維持の必要性
(1) 被収用者に対する移転後の生活についての配慮
(2) 現行憲法と土地収用法の規定
(3) 通損補償から生活補償へ
(4) 実務上の狙い
2 被収用者の補填請求権についてのかつての試み
3 憲法の関係条項の概観
(1) 憲法の関係条項の通説の到達点の把握
(2) 被収用者の憲法上の権利
(3) 憲法13条について
(4) 憲法14条について
(5) 憲法25条について
(6) 憲法29条3項について
(7) 検 討
4 基本的生活権構成の基礎
(1) 人が土地の上で暮らす権利(基本的生活権)
(2) 財産の一部分の欠落の影響
5 基本的生活権の適用と起業者の義務
(1) 被収用者の生活擁護者としての起業者の転換
(2) 基本的生活権の適用第2章 生活補償論の若干の証明
1 生活補償概論
1 生活補償の概念
(1) 生活補償の概念
(2) 生活補償の種別
2 公共用地審議会の答申等における生活補償の考え方
3 生活補償の必要性
(1) 移転を余儀なくされる被補償者の立場
(2) 経済合理性に反する土地の分割の強制
(3) 生活再建の確保に関する提言
4 生活補償の法的根拠
(1) 土地収用法上の根拠
(2) 憲法上の根拠
5 通損概念の充実による生活補償の実現
(1) 通損概念の拡充の必要性
(2) 用対連基準および同細則の改正による生活補償の達成
6 新基準による生活補償の具体的措置
(1) 所有者が異なる二筆以上の土地に設定された借地権の一体評価
(2) 土地の使用に代わる取得制度の新設
(3) 法令改善費用についての補償
(4) 残地での生活再建
(5) 借家人補償における高齢者等の保護
(6) 家賃差補償の拡充
(7) 残地の庭木等の関連移転
(8) 営業廃止補償の充実
(9) 残地の売却損率の引き上げ
(10) 残地等に関する工事費の補償
(11) 残地買収制度の創設
(12) ダム用地の取得における造成費用の補償
2 生活補償としての土地の取得補償
1 生活補償の理念からの土地評価の原則
(1) 代替地主義
(2) 代替地主義から派生する土地価格算定上の三原則
(3) 更地価格主義
(4) 建物の移転補償と移転主義
(5) 事業用地の収用による残地の発生
(6) 残地収用
2 事業損失と起業利益
(1) 残地補償と事業損失の影響
(2) 残地補償と起業利益との相殺の禁止
3 公共用地鑑定の理念と不動産鑑定士の意識
(1) 一つの補償事例から
(2) 「正常な取引価格」についての考え方
3 生活補償としての土壌汚染地の取得補償
1 土壌汚染地の取得価格のあり方
(1) 浄化費用等控除説と非控除説
(2) 補償における生活補償の観念の必要性
(3) 被収用者の置かれている立場とそれへの配慮
(4) 非控除説の二つの前提
(5) 線買収起業者が生活必需財産を収用するときの価格
(6) 心理的嫌悪感等(スティグマ)について
(7) 損失補償基準要綱上の根拠
2 汚染状況調査費用の負担
(1) 汚染状況調査費用負担の原則
(2) 非控除説の適用
(3) 国土交通省の土壌汚染対策研究会の最終報告の結論
(4) 運用益損失分の補償について
3 面買収における瑕疵担保責任の追及
(1) 面買収の場合の原則
(2) 土壌汚染地が市場に出る場合の問題点
(3) 面買収の方法
4 汚染地を取得した起業者の対応
4 通常生じる損失の補償
1 はじめに
2 通常生じる損失の補償の概念
(1) 通常生じる損失の補償の規定
(2) 通常生じる損失の類型
3 通常生じる損失の補償の必要性
(1) 収用と自由取引との相違点
(2) 通常生じる損失の補償の憲法上の根拠
4 通常生じる損失の補償の範囲
(1) 通常の事情と特別の事情
(2) 実際に生じる損失との違い
(3) 債務不履行における通常性について
(4) 民法416条の通常性についての立法論
(5) 通常が妥当しない場合
(6) 通常生じる損失の類型的特徴
5 物件移転補償
1 物件移転補償の概念
(1) 物件移転補償の概念
(2) 移転の概念
(3) 移転補償の種別
2 移転主義
(1) 移転主義の意義
(2) 代替地確保の原則
(3) 土地を更地価格により補償する理由
(4) 移転主義の変容
3 残地における生活再建と移転補償
(1) 代替地問題と生活再建
(2) 建物移転先認定の合理化
(3) 建物移転工法認定の合理化(曳家原則の修正)第3章 生活補償の具体的適用
1 「正常な取引価格」と「土地市場の不完全性」
2 正常な取引価格と鑑定評価による「正常価格」
3 収益還元法
4 広大地の評価における開発法の適用
5 事業の施行によって取引価格が低下したときの取得価格
6 標準的でない土地の一部を買収する場合の評価
7 奥行逓減率には「平均」と「限界」の二つがある
8 建築基準法の「二項道路」沿いの土地の評価
9 鉄道軌道敷を買収する場合の評価
10 地蔵堂の敷地の使用権に対する補償
11 土壌汚染地の買収
12 崖地を含む土地の評価
13 崖地を含む土地の崖地部分を取得する場合の評価
14 借地権と底地の評価
15 底地の鑑定評価の方法
16 隣接借地権との一体利用評価の問題
17 土地を使用する場合の正常な地代
18 残地補償と起業利益の相殺禁止
19 分譲マンションの素地となりうる土地の一部を買収するときの評価
20 区分所有建物の一部のみを取得する場合の残存部分の価値減
21 マンションの1階部分に位置する店舗の移転補償
22 階層別効用比と地価配分率と区分所有権価格比との関係
23 移転する区分所有者の敷地利用権の持分
24 建物の賃貸借において授受される一時金に関する補償
25 特許等を使った特殊な工法によって建てられた建物の推定再建築費
26 工場の機械設備の移転補償
27 事実として営業廃止となる場合の営業権補償
28 営業権と企業価値用語索引
用地買収と生活補償
基本的生活権の構成と具体的補償事例田辺 愛壹
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